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しこり

四肢の軟部腫瘍(しこり)・骨腫瘍は整形外科が取り扱う分野の一つです。
当院でよく遭遇する軟部腫瘍についてご紹介いたします。

※生検を含む精密検査や手術を要すると考えられる軟部腫瘍・骨腫瘍については、専門的な検査や治療を行うことができる新潟大学医歯学総合病院整形外科腫瘍班または新潟県立がんセンター整形外科などの医療機関へご紹介させていただいております。上記の医療機関の外来は完全予約制であり、受診する際には当院などからの紹介状(診療情報提供書)と地域連携システムを介した予約が必要となります。お気軽にご相談ください。

注意①:軟部腫瘍は悪性でも痛みがありません。一般の方は痛みがないから、大きくなるまで放置していたという方がよくみられます。これは大きな間違いで、軟部腫瘍は悪性でも痛みがないのが普通です。経過が長い腫瘍の中にも悪性軟部腫瘍があり、何年も前からある四肢などの「しこり」が徐々に大きくなってきた場合は整形外科専門医の診察が必要です。悪性軟部腫瘍には、脂肪肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫、胞巣状軟部肉腫などさまざまな種類があります。

注意②:患者さんの希望などで可動性のある腫瘍や隆起性の腫瘍を良性と判断し病院でうっかり切除され、後で悪性と判明し問題になることがあります。切除後に病理検査で悪性が疑われた場合、再発するまで待たずにすぐに腫瘍を専門とする医師に紹介してもらう必要があります。初回の手術創の周りを含めて大きく切除する追加切除が必要になるため、安易に生検や切除をしないほうが良い場合もあります。症例によっては追加切除の前に化学療法や放射線療法も必要になります。

ガングリオン  粘液嚢腫(ミューカスシスト)  脂肪腫  滑液包炎  ベーカー嚢腫  足底線維腫  グロームス腫瘍

粉瘤(アテローマ)

骨腫瘍はこちら

 

ガングリオン

ガングリオンはなかにゼリー状の物質の詰まった腫瘤です。
典型的なものは手関節背側(甲側)に生じるガングリオンです。これは手関節の関節包(関節を包むふくろ)に繋がっています。
その他のガングリオンのできやすい場所としては、手首の母指(親指)側の掌側の関節包やばね指の生じる指の付け根の掌側の腱鞘のあるところです。

症状
手首など、関節の周辺や腱鞘のある場所にに米粒大からピンポン玉くらいまでの腫瘤ができます。腫瘤は大きくなったり小さくなったりすることがあります。手首の甲にできることが多いです。軟らかいものから硬いものまであります。
通常は無症状なことが多いのですが、神経のそばにできると神経が圧迫され、痛みやしびれ、運動麻痺が出ることがあります。手を使いすぎると腫瘤は大きくなることがあります。

ガングリオンの症状

原因
関節包(関節を包む袋)や腱鞘(腱を包む鞘)の変性により関節包や腱鞘から発生します。若い女性に多く見られますが、必ずしも手を良く使う人に見られるわけではありません。

病態

ガングリオンの病態

関節液や腱と腱鞘(腱の周りにある浮き上がり防止の鞘)の潤滑油である滑液がガングリオンの袋に送られ、濃縮してゼリー状になります。関節や腱鞘に生じるものは、関節や腱鞘に繋がっています。特に関節からできるものは、関節包に繋がる長い茎で繋がっていることがほとんどです。
そのほかにも、ガングリオンは身体中の至る所に生じます。骨や筋肉、神経に出来るガングリオンもあります。これらは粘液変性したものが融合して生じると考えられています。

診断
腫瘤があり、注射針を刺してゼリー状の内容物が吸引できればガングリオンと診断できます。なかには皮膚の上から触れない小さなガングリオンもあります。そのような場合は診断がつきにくいので、超音波検査やMRIをして診断します。手関節の痛みがいつまでも続くオカルトガングリオン(不顕性のガングリオン)もその一つです。

治療
ガングリオンは無症状なら放置しても問題ありません。ただし、手首などに腫瘤ができたら診断をしてもらうためにも整形外科を受診しましょう。大きすぎて見た目が良くない場合、痛みが強いもの、神経が圧迫されて神経症状があるもの(痛みや運動障害)は治療が必要です。保存的療法としては、ガングリオンに注射針を刺して注射器で吸引し内容物を排出します。何回か吸引排出する治療を行ううちに治ることもあります。ガングリオンに力を加えて押し潰す治療法もあります。繰り返し再発する場合は手術でガングリオンの袋ごと摘出します。どのように治療しても再発する可能性があります。

 

粘液嚢腫(ミューカスシスト)

 

へバーデン結節(指のDIP関節の変形性関節症)に伴い、DIP関節の背側~側面に粘性の高いゼリー状の液体が貯まるものです。
見た目が悪くなるだけでなく、薄くなった皮膚がケガなどで破れると、DIP関節ごと感染してしまう危険性があります。穿刺吸引してもその後放置すると高い確率で再発します。当院では、穿刺吸引後、2~3週間の圧迫固定を行うことで再発率を下げる工夫を行っています。

 

脂肪腫

脂肪腫は、皮下にみられる柔らかい脂肪の塊で良性の腫瘍です。中には比較的硬い筋肉内の脂肪腫もあります。年齢を問わず発生し、ゆっくりと大きくなりますが、小児では珍しいのが特徴です。

好発部位

脂肪腫は体のどこにでも発生しますが、首、肩、上腕、前腕、太ももに好発します。

症状

皮下にあり、触ると柔らかい、指で押すと弾力があり、可動性がある(皮膚の下を動く)、皮膚の色は正常、ゆっくりと大きくなるなどの特徴があります。
痛みなどの症状は通常ありません。
血管筋脂肪腫というタイプ(多発することもある)では神経を圧迫して痛みなどを生じることがあります。

検査

身体所見(触診)である程度は脂肪腫と判断できます。
超音波(エコー)検査では、外来で簡単にガングリオンなど他の軟部腫瘍との鑑別を行うことができます。さらに、腫瘍の全体像、内部、腫瘍周囲の重要血管・神経との関係性などを知るにはMRIが有用です。

脂肪腫の鑑別として最も重要なものに、さまざまな肉腫(悪性軟部腫瘍)があります。
また、脂肪腫のように思えても、比較的大きなものは高分化型脂肪肉腫(低悪性)のこともあり、区別が必要です。ただし超音波やMRIといった画像検査では、良性の脂肪腫と高分化型脂肪肉腫の区別は難しいため、検査を兼ねた治療として専門機関での腫瘍摘出術と病理検査をお勧めいたします。

治療

脂肪腫は(良性の脂肪腫であれば)急いで治療する必要のない軟部腫瘍です。しかし痛みなどの症状がある場合や、徐々に大きくなってきた場合には検査・治療の対象となります。
とくに悪性軟部腫瘍である脂肪肉腫との鑑別は、腫瘍を摘出し病理検査を行ってはじめて診断がつくので、腫瘍の存在に気づいたらまず一度整形外科を受診してください。

 

滑液包炎

滑液包とは、関節の近くに存在し円滑な関節運動を補助している少量の液体(滑液)で満たされている袋で、皮膚、筋肉、腱、靭帯などと骨がすれる部分に位置し、衝撃を吸収し摩擦を軽減させる働きがあ ります。滑液包に過剰な摩擦や圧迫が加わると炎症が起こり、滑液が増えてしこりになります。痛みのないこともありますが、炎症が生じた経過や原因によっては、痛みやしびれ、熱感などが生じることもあります。滑液包は肩、肘、足関節(足首)、大腿骨の大転子など様々な関節の近くに存在し、とくに膝関節には10数個の滑液包があるといわれています。滑液包に水が多く溜まってくると、内圧が高くなって強い痛みが生じたり、周囲の静脈に炎症を起こし たりすることがあります。直接的な刺激のほか、感染症や糖尿病、痛風、偽痛風、関節リウマチといった病気に関連して足関節滑液包炎を発症することもあります。そのため、原因によって治療法が異なります。

検査

関節に生じている変化を観察することを目的に、レントゲン検査や超音波検査、場合によってはCT検査、MRI検査などの画像検査が行われます。また、滑液包炎では、液体成分が過剰に蓄積します。その液体成分を針で採取し、炎症の状況や細菌の有無などを確認するために用いることがあります。
そのほか、全身の炎症状況や原因となっている病気の有無(痛風や糖尿病など)を確認するために、血液検査を行うこともあります。血液検査では、白血球数やCRP、尿酸などの項目をみます。

治療

関節や滑液包への負担は症状の悪化にもつながるため、局所を安静にする、冷やすなどが有効です。安静を保つために、一時的に関節を固定することもあります。この場合、炎症の状況をみつつ、運動制限を徐々に解除していきます。
痛みがある場合には、痛み止めやステロイドなどを内服薬または局所注射として使用することもあります。
原因となる病気が存在している場合には、それに対応した治療も検討します。たとえば、細菌感染症が原因となっている場合には、抗生物質の使用が検討されます。糖尿病や痛風などが原因となっている場合には、食事療法や運動療法、薬物治療などが導入されます。

肘頭滑液包炎

肘の後ろの出っ張りが腫れ、肘頭滑液包に水が溜まっている状態です。肘頭とは、肘の後ろの突起部分のことを言います。その部分に存在する滑液包が肘頭滑液包です。原因は外傷、感染、痛風などがあります。外傷では、持続的な圧迫、軽くても頻回に叩打されることで起こります。肘頭を机や床につくことが多い人に多くみられます。

膝蓋前滑液包炎

脛骨粗面滑液包炎(浅膝蓋下滑液包炎)

足関節滑液包炎

足関節周囲にも複数の滑液包が存在し、炎症を生じれば滑液包炎とよばれます。外側のくるぶし(足関節外果)の上や踵のアキレス腱が付着している部位などの滑液包炎の頻度が多いです。足関節周囲(特に前外側が影響を受けることが多い)が腫れます。足関節の滑液包に対して刺激が加わり炎症が起こることで、足関節滑液包炎が引き起こされます。具体的には、直接的な外力、転倒、正座やあぐらなどの体勢を繰り返し行い外くるぶしに対する刺激が多い、変形性足関節症(足首の変形性関節症)などが原因になります。

 

 

ベーカー嚢腫(膝窩嚢胞、ベーカー嚢胞)

ベーカー嚢腫(のうしゅ)とは?

主な症状は、膝の裏が腫れている。膝を曲げる際に圧迫感や違和感があるといったものです。50歳代以降の女性に多くみられます。膝の裏の腫れ具合と触診により簡単に診断できます。他の腫瘍との鑑別のために、超音波検査やMRI検査などを行うこともあります。
*嚢腫・嚢胞とは・・・液体で満たされた袋状の病変です。

症状

症状としては、膝の腫れ、違和感、不快感などがあります。ベーカー嚢腫自体の痛みが強いことは少ないですが、何らかの理由により関節液が急増し、嚢胞(滑液包)が破裂すると、嚢胞内の関節液が漏れ出し周囲の組織に炎症を生じさせ、急速に局所的な痛みや腫れを起こす場合があります。
また、膝の裏側を通っている血管がベーカー嚢胞に圧迫され静脈炎を発症させることもあります。

原因

膝 の後ろにある滑液包(かつえきほう)といわれる袋で炎症が起こり、関節液の分泌量が増えて関節腔(かんせつくう)から滑液包に流れ込んで過剰な関節液が溜まることによりできる腫瘤です。

滑液包とは、関節にある少量の液体(滑液)を含んだ袋で、皮膚、筋肉、腱、靭帯などと骨がすれる部分に位置し、衝撃を吸収し摩擦を軽減させる働きがあ ります。滑液包に過剰な摩擦や圧迫が加わると炎症が起こり痛みを生じます。様々な関節の近くに存在し,、膝関節には10数個の滑液包があるといわれています。滑液包に水が多く溜まってくると、内圧が高くなって強い痛みが生じたり、周囲の静脈に炎症を起こし たりすることがあります。
初めにベーカーという人が細菌(結核菌)による膝関節炎に合併する嚢腫として紹介したため、このような名前がついていますが、実際は細菌による関節炎よりも変形性膝関節症、関節リウマチ、半月板損傷、軟骨損傷、オーバーユース(膝の使い過ぎ)といった膝の疾患に合併して起こることが大半です。
 
検査

基本的に診察にて問診と視診、触診を行い、エコー(超音波)検査を行います。変形性関節症や関節リウマチ、半月板損傷などを併発していることがあり嚢腫の大きさや位置を正確に知る必要がある為、MRI検査を行う場合もあります。

治療

基本的に症状が出ていなければ治療の必要はありません。ベーカー嚢腫の存在のために膝関節の可動域制限がある場合や、痛みや腫れなどが強くなり日常生活に支障をきたすようなら、湿布や内服薬での治療とともに、エコーガイド下で注射器にて内容物(滑液)を吸引します。吸引後に炎症を抑える注射や飲み薬を用いますが、強い症状がなければ時々吸引を繰り返しながら 経過を見ていく場合もあります。一回の吸引で収まること もありますが、早ければ数日で再発することもあります。炎症の原因となっている病態(半月板や軟骨など)の治療を行わなければ症状を繰り返すことがあります。

それ以外に、ベーカー嚢胞の形成を予防するためにステロイド薬を患部に注射することもあります。もし、嚢胞が破れてしまった場合には非ステロイド性抗炎症薬で痛みと炎症を抑えていきます。

手術療法は、保存的療法を行っても改善しない場合に限られますので手術が行われることは多くありませんが、痛みが非常に強い場合などには外科的手術で嚢腫を摘出することも稀にあります。膝の裏側には重要な神経や血管が多数走っていること、また完全に取り除くことは難しく、摘出しても再発することがあることから、手術には慎重な判断が求められます。

MRI検査(T2矢状断像)

 

足底線維腫

足底線維腫は外傷や機械的刺激などで生じる、足底の土踏まずにできる良性の腫瘍です。歩行時の痛みが出て腫瘤として触れます。痛みが無いこともあります。はっきりとした原因は分かっていません。足底腱膜炎と症状は似ていますが、足底腱膜炎は足底腱膜の炎症による痛みで、腫瘤は触れません。

通常、腱や靭帯などの組織はそれ自体に負担がかかるのではなく、付着している部分に大きな負荷がかかります。従って足底腱膜はその付着部である踵の骨との間に炎症を起こしやすいのですが、ときどき足底腱膜そのものに障害を起こすことがあります。足底腱膜自体は非常に強い組織であるため、かなりの負荷がかかっても切れてしまうようなことは滅多にありません。しかしながら慢性的な負荷により小さな損傷が起こったり、それが治ったりを繰り返すことは多く、これにより損傷部位は瘢痕と呼ばれる硬い組織に置き換わり、それを腫瘤のように触れるようになると考えられています。

診断は超音波検査(エコー)やMRIを行います。腫瘍というものは、他疾患との鑑別や確定診断には生検が必要ですが、悪性が疑われない限り経過観察をして、急速な増大を認めなければ問題ないと考えます。但し、足底腱膜に負荷がかかっている原因の対策を行う必要はあると思います。

治療は症状に応じて行います。痛みに対しては消炎鎮痛剤、ステロイドの局注が効果的です。数回にわたりステロイドの局所注射を行うことで腫瘍の縮小を期待することができます。歩行や立位で痛くて困る場合は装具療法としては足底板(インソール)を使用します。大きくても手術で切除する必要性はほとんどありません。

∧エコー画像:皮下に低エコー(黒いかたまり)の腫瘤を認めます。

 

グロームス腫瘍(グロムス腫瘍)

グロームス腫瘍とは

爪が痛い!? 指先が激痛!? それはグロームス腫瘍かもしれません。

「爪に物が当たると激痛が走る。冷たい水に触るとやはり痛む。」このような状態が長年続き悩んでおられる方は、まず爪の甲をよく見てください。爪の甲は一般的には乳白色からピンク色をしていますが、その中に一点青みがかった場所が見える事があります。この場合はグロームス腫瘍が疑われます。

手指や足趾の爪の下に出来て、強い痛みを伴うことが特徴の良性の腫瘍です。外観は暗紅から紫紅色調で直径1cm以下の硬い腫瘍です。発生場所の多くは爪の下で、指の腹側に出来る事もあります。男性より女性が3倍前後多いです。20~40歳を中心にあらゆる年代に発生する可能性があります。指先に物が当たったり、寒いと爪のあたりが痛い場合や、爪の下や指腹の深い部分に少し触っただけでも痛い腫瘍が出来ていたら、グロームス腫瘍の可能性があります。爪に腫瘍が接すると激しい痛みが現れ、冷たい水の刺激で痛みが増します。グロームス腫瘍が疑われた場合は画像診断(レントゲン検査や超音波検査、MRI検査)によって、診断が行われます。基本的には手術によって治療をし、手術で腫瘍が取り切れれば、痛みはなくなります。

80~90%は爪の下に出来ます。爪の変形や特徴的な症状があり腫瘍が爪の下に透けて見える場合などは専門医が診ればすぐに診断がつきます。ただ比較的まれな病気で、ミリ単位の小さな物が多いため、なかなか診断がつきにくく、複数の病院を受診される方や長年にわたり診断がつかないまま放置されている方もいらっしゃいます。悪性になることはありません。爪の下以外にも発生することが知られています。ときには膝の近くなどに発生する例も報告されています。どの部位で発生したとしても、強い圧痛と温度の変化による痛み、自発痛が特徴的な症状ですが、爪の下以外に発生した場合、たとえ特徴的な症状があってもしばしば診断確定に数年を要したり、腫瘍の存在を確認できないことがあります。

指先の痛み、指の痛み、爪の痛みなどでグロームス腫瘍を疑う場合、患者さんにお尋ねした経過と、診察所見を最も重要視しています。指先の激痛でお困りの方、レントゲンや検査で異常はないので様子をみましょうと言われている方は、一度ご相談ください。

原因・病態

グロームス腫瘍とは、グロームス器官と呼ばれる組織から発生する良性腫瘍です。グロームス器官は主に手足の指にあることが多く、指の血流を血管のネットワークの末梢の部分(動静脈吻合、動脈が静脈に変化する部位)で調節することで皮膚温の調節を行っている組織です。爪の下にはグロームス器官が多数存在しており、同一指で別部位で再発することもあります。

症状

指先(指尖部)に物があたったり、寒いときに爪のあたりに痛みが出ます。爪の付け根あたりに痛みがでることが多いです。
爪を触れるだけで痛みがあり、圧迫すると激痛を生じることがあります。
寒くなったり冷たいものに触れた時に痛みが強くなったり、寒暖差によって痛みが増大するのが特徴で、冬場や水仕事の際に特に痛む事が多いようです。

腫瘍の大きさによっては爪に割れ目ができたり、爪に溝が入るように変形することもあります。爪の下には爪床とよばれる部分があり、爪を末梢に運んでいます。この爪床は末節骨の上の爪母より産生されています。グロームス腫瘍の多くはこの爪床と骨の間にあるため、爪の変形がおきます。

痛み止めを飲むと楽になります。

痛みが出る理由は、痛みのもととなるプロスタグランジンを生成するシクロオキシゲナーゼ(COX-2)を生成する細胞で腫瘍が出来ているからです。そしてCOX-2を抑制する作用のある痛み止め(NSAIDs)を内服することにより痛みが軽減します。

検査・診断

爪の下に出来た場合は、わずかに青み~紫がかったピンク色の腫瘍を爪の表面から透けて見える場合がありますが、小さい場合や指腹に出来た場合は確認する事が困難な場合も多いです。様々な部位の色々な検査を受けても、なにも見つからずに”原因不明”、”気のせい”などと言われてきた患者さんも多くいらっしゃいます。グロームス腫瘍の診断に最も重要なのは、患者さん自身に教えていただく症状や経過であり、手外科専門医であれば、問診だけでおおよその診断がつけられる場合も多いです。

・レントゲン検査:腫瘍そのものはレントゲンに写りませんが、腫瘍が骨を圧迫していると、その部分が変形しへこんでいることがあります。
・MRI検査・エコー検査 腫瘍を画像で確認できることがあります。部位にもよりますが、これらの画像検査では2㎜以上の大きさのものであれば、描出可能なことがあります。
・冷水テスト 冷水に手をつけると、敏感になって痛みが増します。
・血圧計などで腕を縛って血流を減らすと、痛みが和らぎます。
・爪の変色 腫瘍のある部分が青っぽく変色することがあります。
・爪の変形 爪の下に腫瘍があると、爪が波打ったり、割れたりすることがあります。
・Love's pin test 腫瘍があると思われる部分をピンやペン先で圧迫すると、強い痛みが再現され指を引っ込めます。
・Hildreth's test 指の根元や腕に駆血帯を装着することでLove's pin test による痛み誘発が消失すれば陽性です。
・cold-sensitivity test 患指を冷たい水につけることで,痛みが悪化します。

MRI検査について
痛みがあり、肉眼で腫瘍の確認が出来ない場合はMRI検査を行うことがあります。MRIは一般に、軟部腫瘍に対して最も行われている検査ですが、腫瘍のサイズが小さいと写らない場合もあります。グロームス腫瘍は非常に小さいことが多く、MRIでは、1/3の腫瘍は見つけられなかったとする報告もあり、MRIで異常が見つからないからと言って、100%腫瘍がないとは言えません。実際、MRIでの異常はないものの、痛みで長年悩んでおられた方がグロームス腫瘍の疑いで手術を受け、1mm程度の腫瘍が見つかり摘出したというケースもあります。

エコー検査について
腫瘤内やその周囲に豊富な血流が描出される、やや黒っぽい影として写ります。やはりエコーで異常がないからと言って、100%腫瘍がないとは言えません。


∧指に発生したグロームス腫瘍のMRI 左:T1強調像で低輝度、右:T2強調像で高輝度

治療

グロームス腫瘍が強く疑われる場合、手術(摘出術)を行います。顕微鏡を用いて手術することで、腫瘍の取り残しをなくせ、再発の可能性は非常に低下しました
グロームス腫瘍は自然に小さくなったりなくなったりすることがないため、手術で摘出する以外に治療法はありません。手術で摘出すればその日の内に腫瘍による痛みはなくなります。ただし術後の痛みが長い場合は1ヶ月以上続くこともあります。

爪の下に腫瘍がある場合、まわりの正常な組織に余計な損傷を与えないように注意しながら、腫瘍部分のみ爪をコの字状に切開して一旦めくり、爪床などの爪の組織を出来るだけ傷つけないように注意しながら腫瘍を慎重に摘出し、爪を元に戻して縫合やテーピングで固定をします。腫瘍が指の脇の方にあれば、爪を外さずに爪の横から摘出手術が可能な場合もあります。腫瘍の大きさや部位によっては爪を一旦剥がすこともあります。

通常、手術は指を根元から麻酔する伝達麻酔(局所麻酔を用いたブロック注射)で行いますので腫瘍のある指は数時間痛みを感じません。日帰り手術となり、所要時間は30分程度です。術後その指には包帯を巻きますが、他の指は動かせますので日常生活でそれほど困ることはないと思います。

術後、通常半年程度で爪は変形を残すことなく再生しますが、爪の変形が残ってしまうこともあります。また残念ながら、手術をしても腫瘍が再発することがあります。また、同じ指で再発する場合、以前とは違う部位に発生することが多いとされています。

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