骨端症
骨端症とは
ケーラー病
フライバーグ病
イズリン病
お子さんの骨が成長をするときは骨のそれぞれ決まった部位に存在する成長軟骨板(レントゲンでは骨端線といいます)という部分が増殖しながら大きくなっていきます。
骨端症とは「骨端線が痛くなる子供の病気」です。中学生くらいになると成長が止まり骨端線も消失しますが、それまでの間に骨端線の部分へ負荷や機械的な刺激が加わることで骨端症を発症し、痛みや成長障害を引き起こします。
踵に発症するものを踵骨骨端症と呼びます。
また舟状骨という足のアーチ構造の頂点付近の骨に成長痛が生じることを第1ケーラー病と呼ばれ、2趾の中足骨頭の骨端線に生じるものを第2ケーラー病(フライバーグ病)、5趾の中足骨の基部に生じるものをイズリン病(Iselin病)と呼ばれています。
お子さんの足は柔らかく未発達で、大人のような構造にはなっておらず扁平足の状態です。このため、しっかりと体重を支えることができず、歪みと負荷が大きい部分に骨端症が生じると考えられています。
お子さんの体には柔軟性がありますので、たとえ足に痛い場所があっても無意識のうちに体の他の部位で補うことができてしまいますが、もし痛みを訴える場合は「ただの成長痛だろう」などと聞き流さずに必ず早めに対処することが重要です。
踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう 別名:Sever病、シーバー病、セーバー病)
お子さんが『踵(かかと)が痛い!』と言ったら、もしかして「踵骨骨端症」かもしれません。
10歳前後の男子に多くみられる病気で、踵の軽い腫れ、圧痛(押すと痛いこと)、歩行時痛がその症状です。過激な運動のあとに症状が出ることが多く、踵の痛みのため、つま先歩きになることもあります。
踵骨骨端症はスポーツ全般で起こり得ますが、特にジャンプや長く走ることが多いサッカーや野球、バスケットボール、裸足や底の薄い靴で競技を行う剣道・体操・バレエなどスポーツを熱心に行っている10歳前後の活発な男子(小学校高学年~中学前半)に多く起こり、女子の約2倍の頻度です。通常、片側の足に起こることが多いですが、まれに両足に起こる場合があります。
踵の腫れ、圧痛(押したときの痛み)、歩行時痛がみられ、軽症のうちは踵が少し痛いくらいですが痛みで足をつけないほどの重症に至ることもあります。経過は半年~1年と長くかかることがありますが、骨が出来上がってしまえばその後痛みが続くことはありません。
成長期のお子さんに起こるため、“成長痛“と捉えられてしまうこともありますが、膝のオスグッド病と同じく、「スポーツ障害」の一種と考えてください。早めに整形外科で適切な治療を受けることが必要な疾患です。初期の段階で発見・早期治療開始することが、結果としてスポーツの早期復帰に繋がります。
運動を中止したり、後に述べるストレッチを行っても痛みが改善しない場合や再発を繰り返すようであれば、姿勢やフォームの未熟さが原因になっているかもしれません。間違ったフォームでスポーツを行っていると、踵骨骨端症だけでなく、さまざまなスポーツ障害の原因になります。ベストパフォーマンスが出せるようになるにはスポーツを痛みのない状態で行うことが重要です。痛みが続くようであればスポーツ整形外科を受診してください。当院もフォームや体幹バランス、筋力や関節のチェックを随時行っておりますので、お困りのことがあればご利用ください。
原因
踵骨骨端症の原因は、成長期の踵への過剰な負担です。
子供の骨は未発達で、とくに踵の骨には骨端線の部分にアキレス腱と足底腱膜という強固な組織が付着しており、とても大きな力がかかってきます。ランニングやジャンプ動作などの際に、かかとの成長軟骨部と踵骨骨端核がアキレス腱や足底腱膜によって牽引され(引っ張られる)負荷が繰り返し加わりストレスが集中することで炎症が起こり、踵骨骨端核(踵の骨の骨端線より先の部分)の血流障害(骨壊死)や炎症(骨軟骨炎)が起きて痛みを生じるとされています。時には打撲などの外傷がきっかけとなって発生する場合もありますが、通常は度重なるストレスによって発症します。『運動を急に始めた』、『急に練習量が増えた』など過度の負担による使い過ぎ(オーバーユース)が大きな原因となります。また、土踏まずが無いような足(扁平足)の場合も踵に負担がかかりやすくなる傾向があり、踵骨骨端症の約8割の人に、扁平足など足のアライメント(骨や関節の並び)の異常があったとされる報告もあります。
原因① アキレス腱と足底腱膜による引っ張られるストレス
踵骨にはアキレス腱(下腿三頭筋という筋肉が集まっている腱)がくっついています。走ったり、ジャンプなどをすると下腿三頭筋が伸び縮みをします。下腿三頭筋からアキレス腱を伝って、踵骨をひっぱるストレスが生じます。
また足の裏にある足底腱膜も踵骨にくっついています。運動時、ダッシュやジャンプの着地などで足底腱膜は引っ張られます。足底腱膜が引っ張られるストレスによって踵骨に負担がかかります。
アキレス腱、足底腱膜を伝って生じるストレスによって、踵骨が損傷を受ける事で踵骨骨端症になります。
特にこれらが硬い状態でダッシュやジャンプなどの激しい運動を繰り返すと、踵の骨への負荷が大きくなりすぎてしまいます。
さらに、扁平足や外反足など足のアライメント異常を持つ子どもの場合は、構造的に踵に負担がかかりやすくなるため、より踵骨骨端症を発症しやすくなります。
原因② 成長期で骨が未熟
踵骨骨端症の発病が多い小学校高学年(10歳前後)は、ちょうど子どもの成長期に重なります。
成長期の子どもたちの骨には、元々の骨のほかに、新しく骨になるための“成長軟骨”と“骨端核(骨の端っこの小さな骨)”が存在しているため、骨の強度が弱い時期です。さらに、腱などの軟部組織は、骨と同じスピードでは成長できないため、成長期はアキレス腱の柔軟性が低下して、硬くなりやすい状態でもあります。
原因③ クッション性の悪い靴や硬い地面での運動
踵に強い衝撃がかかる事でも症状を引き起こします。クッション性の低いシューズやスパイクを履いていたり、地面が硬いグラウンドでの運動は地面からの衝撃で踵への負担が大きくなり痛みを引き起こし、踵骨骨端症を発症する可能性が高くなります。
踵にクッションのある市販のインソールを靴の中にいれるだけでも痛みが解消するケースもあります。場合によってはアーチサポート機能のついたオーダーメイドの機能的インソールを用いることもあります。
原因④ 姿勢やフォームの未熟さによる踵への負担集中
スポーツを休ませただけでは治らない(再発する)ケースもあります。これは、踵にストレスが集中するような身体の使い方や動作の習慣、運動の未熟さ、身体の硬さ(全身の関節の柔軟性)、筋力の少なさなど、身体的要素の問題があることが少なくありません。この場合は、痛みが出るたびに安静にして一時的に痛みが消え、再度運動を再開するとまた痛みが出てしまうというサイクルを繰り返してしまいますので、なかなかスポーツ復帰できません。踵だけの治療では不十分ですのでスポーツのフォームなどを含めた医師と理学療法士のタッグでアスレチックリハビリを行う必要がありますので、お困りの方はご相談ください。
上記の原因が改善されず踵骨にアキレス腱と足底腱膜からのストレスがかかりすぎると、成長期の踵骨骨端核が分裂してしまうことがあり、こうなると治療に時間がかかることも多くなります。お子さんが踵の痛みを訴えた場合は早めに整形外科専門医を受診し早期診断と早期治療をお勧めいたします。
症状
激しい運動の後や、朝起きた時などに踵の後方にジーンとするような痛みを生じます。初めは運動時の軽い痛みだけですが、悪化すると次第に痛みのために踵を地面につけられず、つま先立ちで歩く(尖足歩行)ようになります。さらに進行すると、安静にしているときでも痛むようになります。
・ジャンプやダッシュなど運動中や運動直後に踵が痛くなり、休むと痛みが治まる
・踵に軽い腫れや熱を持つことがある
・踵を押すと痛い(圧痛がある)
・踵の痛みのため、つま先歩きをすることがある
・運動中は痛みがないが、激しい運動の後に踵の痛みが生じる
以上のような症状が成長期のお子さんに生じているようであれば、踵骨骨端症の可能性があります。踵の痛みは運動を中止すると改善されますが、根本的な原因を解決できないと再発・進行してしまいスポーツの継続が難しくなります。痛みが続いたり悪化するようでしたら、一度お近くの整形外科専門医を受診されることをお勧めいたします。当院ではこういった症状に対しても対応可能です。
検査・診断
レントゲン撮影では、踵骨骨端核の不規則な骨硬化像を示すことがありますが、症状とレントゲン像の変化が一致しない場合もあります。局所疾患ですので血液検査は正常値を示します。
上記の特徴的な症状に加え、問診(性別・年齢・スポーツ活動の有無など)やレントゲン検査、超音波検査などで診断が確定します。
治療
主な原因がスポーツのやりすぎによるオーバユースなので、まずは安静とし、過激な運動は中止して踵に負担がかからないようにして経過をみていきます。痛みが強く続く場合には、歩行を免荷(踵に体重をかけない)にするため、松葉杖を使います。扁平足やクッション性の悪い靴などの要因がある場合は靴のインソール(足底挿板:靴の中敷き)やアーチサポートを使用します。
経過は1~数年と長いことが多いですが、予後(治ったあとの状態)は後遺症を残さず一般に良好です。
スポーツを頑張っているお子さんが多いので、当院ではなるべく運動を中止しないように留意した治療を心がけています。踵骨骨端症の治療ではまず以下を行います。
① 歩くだけでも痛みがある場合には運動を休止する。
② 運動時のみ痛い場合には、踵の負担を減らすため、運動量を減らす調整(運動の頻度と強度を控える)をし、出来るだけ足を安静に保つ。
練習量については色々な事情や意見があると思いますが、無理をして痛みが悪化すると結果的にスポーツでベストパフォーマンスが出せなくなりますし治癒までの時間が余計にかかります。
③ 硬いコンクリートの上を走ることは避け、芝生や土の上を走るようにする。
④ ウォーミングアップとクールダウンをしっかり行う。運動直後、踵の痛みが強い場合は15分程度の短めのアイシングも効果的です。痛みの強いときや運動後にはアイシング、アイスマッサージで踵の周囲を冷却します。当院ではアイシングシステムで行います。
⑤ お風呂でよく温め、就寝前にかかとに消炎鎮痛外用剤(湿布)を張り炎症を抑える。
⑥ ふくらはぎやすねの筋肉、アキレス腱をストレッチで柔らかくする。
⑦ 出来るだけクッション性のある靴底のシューズを使用する。
ある程度痛みがおさまってきましたら、底の厚いジョギングシューズなどで徐々にジョギングは始められます。ただしスパイクはクッション性が足りないためお勧めできません。
⑧ 柔らかい素材でできたパット(ヒールパット)で踵を保護する。
⑨ 装具療法として土踏まずを持ち上げる靴の中敷き(アーチサポート、アーチパッド、クッション性の高い機能的インソール)を使用し、踵にかかる負担を軽減させる。
靴が足に合っていないと、身体のクッション機能をうまく使えないことがあります。足が靴の中で滑らないように、運動時はしっかり靴紐を締める習慣を付けてください。靴の大きさの目安は「踵を合わせて履いた時に、つま先に約1㎝の余裕ができる大きさ」です。また、足のアライメント異常がある場合は正しい姿勢が取りづらく、踵への負担が増えます。靴が大きい時や扁平足など足のアライメント異常がある場合には平らな中敷きではなく、踵や土踏まずをサポートしてくれるオーダーメイドの「機能的インソール」が有効です。当院では一人ひとりの足型を取って、スポーツ時に使うスパイクなどに合わせてオーダーメイドで作成します。
⑩痛みが強く続き歩行が困難な場合には、踵への負担を軽減させるため松葉杖を使う。
⑪低周波、温熱療法などの物理療法(電気治療)
⑫理学療法士の指導によるアキレス腱や足底腱膜のストレッチを行う。
⑬姿勢や動作を分析し、踵骨骨端症になってしまった原因を探る。
スポーツのフォームチェックなども行い、踵に痛みが出ないようなフォームの指導も行います。踵の負担が増えてしまった要因として、体のアライメント(体幹の使い方や姿勢の取り方)が整っていない状態でスポーツをしていることが多いからです。踵を地面につく際に「身体のクッション機能」をうまく使えていないと、運動量が同じでも踵に過度な負担がかかってしまいます。発症直後で症状が強い時は走ったり跳んだりの運動は休まなければいけませんが、腹筋や背筋の筋トレや全身のストレッチなど体幹トレーニングは可能ですので、理学療法士による指導を受けてトレーニングを続けてください。
⑭定期的に痛みの程度とレントゲンでの回復を確認しながら、少しずつリハビリを行い、徐々に運動量を元のレベルに戻していきます。個人差はありますが、一般的には2~3か月で、もと通りのスポーツ復帰が可能となるでしょう。
発症から間もない時期で、すぐに痛みが引かないけど、大会などで動きを制限したなくないというケースでは、テーピングで一時的な固定をするのが有効です。大事な試合があっても、踵骨骨端症の影響を少なくする対策をして臨んでいただくことも可能です。
スマートフォンやゲーム機などで椅子に座って下を向く姿勢が長いお子さまも多く、骨盤が後傾し本来の姿勢が崩れ、体幹を上手に使うことが難しくなり、体のあちこちに支障が出てきやすくなります。そこで理学療法で体幹のトレーニングやストレッチなどを行いケガをしにくい体づくりをサポートしていきます。
踵骨骨端症を予防するには、アキレス腱や足底腱膜のストレッチがとても大事です。運動前後・お風呂上りに、ストレッチしてアキレス腱や足底腱膜(足の裏に縦に伸びる腱)を柔らかくしましょう。自宅でも簡単にできるのでおすすめです。
アキレス腱のストレッチ
直立姿勢から片脚を後ろに引いて、アキレス腱とふくらはぎを伸ばします。
骨盤が壁と水平になるような姿勢を意識して、片脚を後ろに引いて、かかとをグーっと床に押し付けます。反対側の膝を壁に近づけるように曲げます。この姿勢を90秒キープしてふくらはぎとアキレス腱を伸ばしていきましょう。
足底腱膜のストレッチ
硬まった足底腱膜、足裏の筋肉をほぐす方法です。ゴルフボールやテニスボールを足の裏に置いて、ゴロゴロと踏み転がしてください。やや痛いと感じる箇所で90秒キープしましょう。
※手すりを持って行うなど、転倒しないよう注意してください。また、痛みがひどすぎるときは中止しましょう。
また、手で足の指を自分側にゆっくり引き寄せて反らせ、足底腱膜が伸びた状態を10秒キープ。これを左右5回ずつ行う足底腱膜ストレッチも効果的です。
ケーラー病
フライバーグ病(第2ケーラー病)