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上肢のスポーツ障害

投球障害肩 ●肩関節脱臼 ●腱板断裂 ●五十肩(肩関節周囲炎) ●肩鎖関節脱臼 ●肩関節不安定症 ●SLAP損傷
●インピンジメント症候群 ●胸部出口症候群
野球肘(離断性骨軟骨炎、内側側副靱帯損傷、関節内遊離体、関節ネズミ) ●投球による尺骨神経障害
変形性肘関節症 ●(投球系・格闘技系)肘部管症候群  ●肘関節脱臼 ●内側側副靱帯断裂 ●後外側回旋不安定症

手・指

TFCC(三角線維軟骨)損傷 ●ボクサー骨折 ●スキーヤーズ親指 ●舟状骨骨折 ●有鉤骨骨折 ●月状骨周囲脱臼
●ばね指

 

野球肘

症状

成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害を野球肘といいます。
投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。

原因と病態

繰り返しボールを投げることによって肘への負荷が過剰となることが原因です。
肘の外側では投球時に骨同士がぶつかって、骨・軟骨が剥がれたり痛んだりします(外側型野球肘)。
また、肘の内側では骨同士が引き離される力がかかり、靱帯・腱・軟骨がいたみます(内側型野球肘)。
肘の後方でも骨・軟骨がいたみます。

診断

野球をしていて、肘に痛みがあり、動きも悪いなどの症状があれば、野球肘が疑われます。
X線(レントゲン)検査やエコー検査、MRI撮影で診断します。

予防と治療

投球の中止が重要で、肘の安静が大切です。痛みを我慢して投球を続けていると障害が悪化して、症状によっては手術が必要になることもあります。
手術には、骨に穴をあける方法、骨を釘のようにして移植する方法、肋軟骨や膝の軟骨を移植する方法などがあります。

成長期の肘障害パンフレット

野球肘パンフレット

 

投球障害肩

投球障害肩とは

投球障害肩は、日常生活では困らないが全力投球すると肩に痛みがあるというものです。可動域制限もあまりなく、投球動作で痛みを生じます。
基本的には損傷があっても、解剖学的破綻(例えば骨折など)が重度でなければ、約9割はリハビリテーション(リハビリ)で軽快します。痛みがある場合、患部に損傷が起こり、炎症を生じていると考えます。

具体的に投球障害肩というのは、肩関節内インピンジメント症候群上腕骨近位骨端線離開(リトルリーグショルダー)をさします。肩関節内インピンジメント症候群は骨端線が閉じた後(骨の成長が終わった後)に、上腕骨近位骨端線離開は閉じる前(骨の成長中)に生じることが多いです。

  
∧肩関節インピンジメント症候群

 

診断

上腕骨近位骨端線離開では両肩のレントゲンで骨端線の左右差をチェックします。はっきりしない場合はエコーを用いることもあります。

∧上腕骨近位骨端線離開

投球障害肩を評価する方法がHFT(Horizontal Flexion Test)、CAT(Combined Abduction Test) 、HERT(Hyper External Rotation Test)です。

初診時に上肢と下肢の可動域と筋力などを総合的に診察し、上肢・下肢の機能異常の有無を評価します。
CAT(Combined Abduction Test)では、仰臥位(仰向け)で肩甲骨を押さえて肩甲骨を動かないようにし、肩甲上腕関節だけの外転可動域をみる検査です。しばしば投球動作によって後下方の筋肉が硬くなって腕が上がらなくなる場合、陽性になります。


∧CAT

HFT(Horizontal Flexion Test)では、同様に肩後方のタイトネスがあると制限を生じます。仰臥位で肩甲骨を押さえて水平内転の可動域をみる検査です。肩後方のタイトネスがあると水平内転ができなくなり陽性になります。


∧HFT

HERT(Hyper External Rotation Test)では、肩関節を外転外旋位としさらに水平伸展させることで痛みが誘発されるかどうかを評価します。


∧HERT

 

治療

通常まずは肩の治療に入ります。理学療法士とのリハビリテーションにおいてインナーマッスルのトレーニング、あるいは安静、注射(HFT・CAT陽性ならQLS注射:トリアムシノロン1ml+生理食塩水9mlなど)や投薬を行い、 2 ~ 3 週間すれば一時的には痛みも取れ、腕も上がるようになります。しかし、投球を再開すると痛みが再発することがあります。そうした場合は治療として肩だけではない患部外へのアプローチが必要になります。
患部外の障害はさまざまで、股関節、体幹、下半身の柔軟性などが原因となると言われていますが、どこが問題かは個々の選手によって異なります。どこに異常があるか、詳細に原因を選手ごとに検索していく必要があります。全身に多くの問題点があり、それらが複雑に絡み合っていることも少なくありません。

また姿勢によっても肩関節の動きは変わります。良姿勢だと胸椎もやや前弯し、手を真上まで上げることができますが、お腹を突き出した格好で、胸椎が後弯していると肩甲骨が前傾し、外転しているため手を十分上げることができなくなります。肩甲骨は、内転し上方回旋しないと手の挙上がうまくできないのです。この不良姿勢を良姿勢に修正していくのが、肩や肘の痛みに対する基本的な患部外治療になります。このような不良姿勢の選手は小中学生に多く、高校生でもひょろっと背の高い選手でアゴを前に出ている選手にしばしばみられます。

野球にかぎらず、やり投げやテニスのサービスやバドミントンのスマッシュでも同様ですが、良姿勢であれば、胸が張れて肘下がりにならず、スムーズに痛みなく肩外転外旋位がとれます。しかし、アゴを前に出し胸椎が後弯する不良姿勢では、肘も上がらないし、外転外旋角度も制限されます。この状態で外旋を強制すると肘に外反ストレスがかかり、肘にも痛みを生じます。さらにこの状態で肘を後ろに引こうとすると、肩後方を傷めてしまいます。このように不良姿勢で投球していると、肩や肘に痛みが出やすくなってしまいます。
不良姿勢には、下部腹筋力が弱い、股関節が硬い、あるいはその他肩関節以外(頸椎、肩甲帯、胸郭、胸椎、腰椎、骨盤、膝、足関節、足を含みます)に多くの原因が考えられます。当院では姿勢、体幹トレーニング、投球フォームの修正も含めてリハビリテーションを行います。

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