手首の痛み
手首には様々な腱が通っており、日常生活や仕事で負担のかかりやすい場所です。詳細な問診、レントゲンやエコーでの検査、丁寧な診察で正しく診断し、適切な治療を行います。
主な症状を記載しますので、当てはまる方は疾患名をクリックしてご覧ください(例外もございます)。
ドケルバン病 親指を曲げると手首の親指側が痛い
橈骨遠位端骨折 手をついて転倒してから手首が痛くて腫れている
手首の腱鞘炎 手や手首を日常的に動かすことが多く手首が痛い
インターセクション症候群(腱交叉症候群) 前腕の手の甲側(手首より少し肘寄り)が痛くて腫れている
キーンベック病(月状骨無腐性壊死) きっかけなく手首が痛い
TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷) 転倒してから手首の小指側が痛い
ガングリオン 手首にしこりができている
ドケルバン病
症状
ドケルバン病は腱鞘炎の一種で、狭窄性腱鞘炎ともいいます。親指と手首をつなぐ腱や、その腱を覆うトンネルのような「腱鞘」に炎症が起きている状態です。主な症状は以下の通りです。
- 手首(親指側)の腫れや痛み
- 特に、親指を動かすと痛い
ドケルバン病になりやすい人
- 手や指をよく使う仕事・スポーツをしている
- 妊娠中、産後、更年期の女性
- 糖尿病・関節リウマチの疾患がある
- 透析を行っている
治療法
- 手の安静
- 抗炎症薬
- サポーター
- エクオール(自費)
- 腱鞘内注射
- 体外衝撃波
- 手術(腱鞘切開)
橈骨遠位端骨折
手をついて転倒した際に、手首の橈骨という骨の端っこが骨折するものです。
骨の折れ方により、適切な治療は異なります。当院では保存的治療、手術治療ともに精通しておりますのでご相談下さい。
※橈骨以外にも、手をついて転倒した際に骨折する骨がありますので、レントゲンで橈骨に骨折がなくても精査が必要な場合がございます。
症状
通常、手首の強い痛みが生じます。
骨のズレが少ない場合では、痛みが強くなく捻挫と勘違いしてしまうこともあります。
治療法
- 徒手整復:麻酔をかけて、手を引っ張り骨のズレを治します。
- シーネ(添え木)、ギプスで骨がズレないように固定します。腫れると血行障害が出やすいので頻繁なチェックが必要です。
- 骨の折れ方が粉々だったり、ズレの方向が良くない場合は手術を行います。
- ギプスでも手術でも、手首や指が固まってしまうことがあるため、セラピストの指導のもとで十分なリハビリが必要です。
橈骨遠位端骨折のパンフレット
橈骨遠位端骨折は、骨粗しょう症による脆弱性骨折としては初回に起こることが多いとされています。
この骨折自体で寝たきりになることはありませんが、近い将来の脊椎椎体骨折など脆弱性骨折の前ぶれとも言われ、日ごろから骨粗しょう症の検査と治療をしっかり継続していただくことが重要です。
骨粗しょう症について詳しくはこちら
手首の腱鞘炎
手首には様々な腱が通っており、前述のドケルバン病以外にも様々な腱鞘炎が起こります。
症状
炎症が生じた腱に応じて、それぞれの部位に、特定の動きで痛みが生じることが多いです。他院でレントゲンは異常なしと言われた方が受診されるケースが多いです。
尺側手根屈筋腱腱鞘炎、尺側手根伸筋腱腱鞘炎、長母指伸筋腱腱鞘炎などがあります。
仕事や家事での使い過ぎが原因のことが多く、難治性となることがあります。
治療
- サポーターで手首の動きを制限し、手首にかかる負担を軽減します。
- ご職業などで特定の手首の動きや負担があり、それが原因と考えられる場合には、避けた方が良い動きをチェックします。
- 抗炎症薬
- 腱鞘内注射 エコーで腱鞘内水腫の有無を確認し、正確にステロイドと局所麻酔薬を混合した薬液を注射します。その他の治療で難治性の方にも有効なことが多いです。
- 物理療法 血行を改善し痛みを和らげます。
インターセクション症候群(腱交叉症候群)
インターセクション症候群とは
親指を伸ばすための短母指伸筋と親指を外に開くための長母指外転筋と、
手首を反らす働きをする長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋とが、
手首より少し肘側で交叉している部分に起こる腱鞘炎です。
大工仕事や手作業の多いデスクワークを職業とする人や、野球やテニス、バイクの運転など、手首を返す動作の多いスポーツを好まれる方などの集中的に手を酷使する30代~50代の方に多くみられます。
同じような個所の腱鞘炎としては、見かけることの多いドケルバン病がありますが、インターセクション症候群は、ドケルバン病よりも手首より離れた位置のやや背側に発症します。
原因
手作業やスポーツなどにより、指や手首などを反らす動きを繰り返すと、その交叉している場所で腱に負荷がかかるため炎症が起こります。
症状
手首より4~6cm手前のところの、痛みや腫脹、違和感などです。
手首を反らす動きや、親指でキーボードを打つ時などの痛み、また痛みの部分を触れて動かすとギシギシとこすれる感じがする場合もあります。
検査
レントゲンで骨の異常の有無を確認し、
エコーで腱のひっかかりや滑膜炎(血流増加)を確認します。
∧前腕背側短軸像 ゆっくり手関節を背屈・掌屈すると、長・短橈側手根伸筋と、短母指伸筋・長母指外転筋の引っかかりが見られます
治療
親指と手首の動きを制限するような装具にて固定し、患部を安静に保ち炎症を抑えていきます。
痛みが強い時には、炎症部位への注射(エコーガイド下ハイドロリリースやステロイド注射)や患部のアイシングなどを行うこともあります。
インターセクション症候群は腱鞘炎ですので、基本的には手指を使い続けると症状が強くなり痛みも増してきます。よって、手の使い方や使う頻度のコントロールが大切です。
当院では日常生活動作の指導や、趣味や職業を詳しく聞かせていただき、その中でも改善できるものを提案しながら、先ずはテーピングなどの軽い固定や腱の働きの補助を行います。それでも回復してこない場合は、シーネなど着脱可能な装具を作成し固定を行います。
インターセクション症候群かな?と思った方は、早めに対処することでより早期に回復していきますので、手の使い過ぎにより手首近くが痛む場合は我慢せず、当院へご相談ください。
キーンベック病(月状骨無腐性壊死、月状骨軟化症)
月状骨がつぶれて扁平化する病気をキーンベック病といいます。
月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つで、ほぼ中央に位置します。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つです。
症状
手を使った後、手首に痛みと腫脹が見られます。握力が低下し、手首の動きが悪くなります。
原因と病態
診断
手を使った後、手首に痛みと腫脹、握力の低下、運動制限などの症状に加えて手背の中央に押して痛い(圧痛)ところが存在します。X線検査で月状骨に輝度変化が生じていたり、変形が生じていれば診断がつきます。MRI検査をすれば、より詳しい状況がわかります。
治療
症状、年齢などによって治療が変わります。
初期や疼痛が強いときには安静やギプス、装具による固定が行われますが、治らない時には、いろいろな手術が行われます。月状骨にかかる力を減らすために橈骨短縮骨切り術が行われたり、骨移植(遊離や血管柄付きなど)等も行われます。
末期では壊死した月状骨を摘出したり、そこに腱球挿入(腱を丸めてスペーサーとして利用)する方法などが行われます。