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成長痛

「成長痛」をご存知でしょうか?
聞いたことのある方が多いかと思いますが、実際はどのようなものなのか?
病気なのか?病気ではないのか?
などを詳しくご存じの方は少ないのではないでしょうか。

夕方から夜間や寝ている時、時々下肢の痛みを訴える
夜、痛みで泣き出してしまう程でも、翌朝にはケロっとして、幼稚園や小学校では元気に走り回れるので先生からは何も言われない
子育て中の親御さんにとって、子どもが痛みを訴えるときほど心配なことはないと思います。それも突然で原因が分からなければ、なおさらですよね。
このような痛みは「成長痛」の可能性があります。

ここではその「成長痛」について説明していきます。

 

成長痛とは?

「成長痛」は、“幼児から思春期の成長期に起こる子どもの足(下肢)の「特有の症状や特徴をもつ痛み」の総称(呼び名)”として、広く使われています。
病名と言うより、幼児期の繰り返す下肢の痛みで、特に骨や関節の治療すべき病気を認めない場合の症状の呼び方と思ってください。

子どもが夕方から朝方にかけて膝のまわり・足の甲部分・かかと・股関節や足の付け根部分に痛みを訴えるものの、朝になると痛みはなく、検査をしても原因が見つからない。このような場合は「成長痛」と診断されます。

関節炎などの痛みの場合、「この部分」と痛みの場所が特定できるのに対し、成長痛ではばくぜんとこの辺りの痛みとしか答えられないことが多い印象があります。痛みの程度もさまざまです。
成長痛の多くは活動中ではなく、主に夕方から朝方の時間帯に痛みを訴えることが多いことが特徴です。朝には痛みが治まっていて、病院でレントゲンなどの検査を行っても問題を発見することができないことがほとんどです。

また、痛みは下肢(股関節から足)で起こることも特徴の一つです。

見た目に、筋肉や皮膚や関節が赤くなったり、腫れたりすることもなく、びっこを引くこともありません。時間がたてば、徐々に症状は無くなっていきます。

以下のような診断基準が試作されています。

1)疼痛は8時間以上持続しない
2)来院時には無症状である
3)診察上圧痛,腫脹などの異常所見を認めない
4)単純X線検査で異常を認めない
上記4項目とも満たす場合に「いわゆる成長痛」と診断する
いわゆる成長痛(小児の一過性下肢痛)の診断基準作成の試み 横井広道ら、中国・四国整形外科学会雑誌 25(3): 495-495, 2013.

 つまり、医学的に確立された成長痛という疾患はないのです。

 

成長痛と成長期スポーツ障害は違うものです

膝のオスグッド病や踵のシーバー病など、運動をしているお子さまに多いスポーツ障害も「成長痛の一つ」として同じ意味で使われることもありますが、これらは正確には違うものです。
と言うのも成長期のスポーツ障害ははっきりとした根拠のある病名であり、これらを鑑別し除外した上でたどり着くのが成長痛だと考えていいでしょう。

 

成長痛の症状

夕方~夜(寝ている間)や朝方に痛みを訴える
ずっと痛いわけではなく、週2回~月1回程度の不定期に痛む
遊んでいる時や学校、幼稚園では痛みの訴えが少ない
痛みが数時間以内に治まる(一過性の痛み) 
痛い部位に腫れ・圧痛(押すと痛みを感じる)・関節の運動制限などの炎症症状はない
レントゲンを撮っても、特に異常が見当たらない
両親がさすってあげる、触ってあげると痛みが消えることがある

このような状態が2週間~1か月ほど続いている場合は、成長痛が考えられます。

 

成長痛が起こりやすい年齢

幼児期(3歳)~児童期(12歳)あたりでみられ、特に3歳~5歳あたりは特に痛みが現れやすい時期とされています。男の子、特に長男に多いという報告もあります。

有病率は、世界的に10~20%とされ、近年オーストラリアで行われた調査では、4~6歳児の約37%に「成長痛」が認められたと報告されています。

 

痛む場所・痛む期間

膝が一番多いですが、ふくらはぎ、すね、足の関節、太ももなど、成長痛は主に下肢に痛みが現れます。

痛む場所もいつも同じではなく、その時々によって異なります。

また、痛みの訴えは不定期に起こり(月に1~2回、週に1~2回)、痛みを感じる期間も数か月~長い場合には年単位になることもあります。

 

成長痛の検査・診断

検査は、両下肢のレントゲン、股関節や膝の超音波(エコー)検査を行います。
レントゲン、超音波検査ともに、左右で比較し異常がないことを確認することが重要です。

遊んでいる時や学校、幼稚園では、痛みの訴えが少なく(痛みが数時間以内に治まる一過性)、両親がさすったり触ってあげると消えることがある特徴的な痛みがあり、診察室にはスタスタと歩いて入室し、診察上腫れや圧痛(押したときの痛み)はなく、関節の運動制限などの炎症症状はなく、レントゲンや超音波検査でも異常がない場合、成長痛と診断します。

逆にレントゲンやエコーで何らかの痛みの原因となる異常が見つかった場合は成長痛ではありません。

 

成長痛は子どものこころや体調のサイン

子どもが最も多く症状を訴える部位は「膝」で、主に膝の裏側・太股・ふくらはぎ・足首などを痛がりますが、どこが痛いのかはっきりしない場合もあります。成長痛は昼間の遊び疲れに加えて、親や周囲の人からかまってもらいたい気持ちの表現とも言われていますので、特に家庭環境の変化(下の子が生まれた、母親が仕事を始めたなど)があるようなときなどは子どもの訴えを無視せずに、積極的にスキンシップを図ることも大切なことです。
ただし足の痛みを訴える原因は成長痛だけではありませんので、昼間も痛がったり、歩き方がおかしい場合や次第に痛みが強くなってくるようなときは、一度は医療機関を受診し、適切な指示を受けるようにして下さい。

 

成長痛の原因

「成長痛」と呼ばれていますが、骨の成長に伴って痛みが発生することは実際にはないと考えられ、痛みの原因は今のところはっきりしていません。

「成長痛は骨が成長しているから痛みが起きる」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、もし骨が成長することで痛みが出るであれば、下肢だけでなく腕などにも痛みが出るはずですし、成長による骨の伸張によって関節や筋肉など周辺の組織に痛みを生じるという証拠は認められていません。

小児科には反復性臍疝痛(さいせんつう)、反復性腹痛という原因不明の腹痛がありますが、同様のものかもしれません。

一般的には「ストレス」や「筋肉の疲れ」がたまり、痛みとしてあらわれるのではないかと考えられています。

成長痛が起きやすい成長期のお子さまは、下肢の筋肉や骨・関節の発達が未熟で、関節も柔らかくなっていますが、非常に活発に動きます。
日中たくさん走り回ることによる筋肉の疲労が夜間の痛みやだるさ、不快感の原因の一つとなることも考えられています。

また、精神的なストレスや不安も成長痛の原因になるといわれています。

成人でもストレスがたまると頭痛や腹痛が出ることがありますが、同様にお子さまの場合も心のストレスが“下肢の痛み”として現れることがあるという考え方です。

お子さまは成長の過程で、生活できるようになるうえで年齢ごとに色々なストレスを感じます。

ちょうど成長痛が多くなる3歳~5歳頃は、親御さんと一日中一緒だった乳幼児期とは異なり、自分でやらなければならないことも増え、ストレスがたまる時期です。

食事やお風呂、歯磨き
遊んでいるのを辞めて寝なければならない
母親の妊娠、兄弟姉妹ができて、親がかまってくれなくなった
保育園や幼稚園の通園による団体生活
入園、入学、卒業、クラス替え、転居といった環境の変化

こうした日常生活を規則正しく行っていくことに慣れていないため、疲れてしまい、ストレスを感じやすくなります。また、甘えたい、かまってほしいという気持ちが痛みを引き起こすともいわれています。

さらに、小学生になれば友人関係や学校の先生との関係、習い事へのストレス、12歳以降(思春期)になると異性関係や親子関係など、子どもの成長に伴い原因は変わりますがストレスはいつも存在します。

 

成長痛の対処方法

特別な治療はありません。大事なことは、成長痛は仮病でなく、痛いものだと理解することです。一般的に愛護的な対応が効果ある場合が多いようです。優しくさすってあげる、湿布を貼ってあげる、温めてあげる、冷やしてあげる、幼児であれば抱っこしてあげるなどお子さまが安心する、気持ちよく感じる事をしてあげてください。

また、ストレスの要因は多くの場合はっきりしませんが、以下のようにお子さまのストレスが軽減するような生活を送るようにするとよいでしょう。

マッサージしてあげる、足をさすってあげる
湿布を貼ってあげる
足をクッション、布団などで持ち上げてあげる
日中走り回って疲れた体をしっかり睡眠を取って回復させてあげる
お風呂に入って温め、痛い部分を優しくさする
親子のスキンシップを図る

下肢の筋肉のストレッチ体操を行うと、成長痛が和らぐとする報告があります。またストレッチをすることが成長痛の予防につながります。

・仰向けで、こどもの足の裏を親が手で押して足首を反らせる
・仰向けで、こどもの膝を伸ばしたまま親が足を持って持ち上げる
・うつ伏せで、こどもの片膝を曲げ、さらに膝を床から持ち上げる
・身体を支える土台である足・足指を調えることも重要ですので、足指のストレッチも行います。

このようなストレッチをそれぞれ10~15秒、左右それぞれ10~20回ずつ行います。

ストレッチは、お子さまが痛みを感じない程度の力加減で行ってください。毎日少しずつでも継続することが大切です。

 

成長痛の「4つの特徴」と成長痛ではない痛みとの見分け方

成長痛には下記4つの特徴があります。

  • 夕方から夜間に、特に膝周辺に痛みが生じる。
  • 痛みは30分~1時間程度で治まるケースが多い。
  • 痛みを訴えた翌朝には何事もなかったように痛みが治まる。
  • 定期的ではないが、繰り返し痛みが生じる。

成長痛は子供の成長とともに少なくなりますし、後遺症が残ることはありませんので心配せず優しく対処してあげて下さい。

そして、以下の症状は「成長痛ではない」可能性が高いです。

  1. 痛みを訴えはじめてから8時間以上痛みが継続する
  2. 痛みが生じる部位が毎回同じ
  3. 痛みがどんどんひどくなる
  4. 痛みがある部位に腫れがある
  5. 痛みとともに発熱を伴う
  6. 翌朝になっても痛みが治まらない
  7. 足を引きずるように歩いている
  8. 14歳以上の子供が痛みを訴えている

上記のような状態の場合は、「成長痛ではない」可能性があります。整形外科の受診をお勧めします。

 

成長痛と鑑別すべき疾患
(成長痛と似たような症状がでる「病気」)

 お子さまの下肢の痛みには早めに病院を受診し治療すべき疾患が隠れていることがあります。本当は成長痛ではないのに安易に成長痛と片付けてしまうことは危険です。
成長痛であれば緊急性のないことがほとんどですが、お子さまが下肢を痛がった場合は念のため、骨や筋肉といった組織に何らかの疾患が隠れていないか、整形外科専門医でしっかり見てもらう必要があります。

成長痛では、痛みは一時的で昼間は痛がらないことが多く、痛む場所が日によって違います。

しかし、ケガ(外傷)をした記憶がないのに、下肢の痛みがある場合には、下記のような病気の可能性も考えられます。特に股関節周辺の痛みでは安静や精密検査を必要とする疾患が多いです。早めに整形外科を受診しましょう。

骨端症

腱が骨についている部位で起こる痛みです。
成長期(10歳代前半)の子供は、筋肉の伸びが骨の成長より遅いため、筋肉が骨についている部位を引っぱるような状態になり痛みが生じるケースがあります。運動をしているお子さまの踵が痛くなるシーバー病などが有名です。

オスグッド病

成長期のお子さまの膝のスポーツ障害で最も多いと考えられています。
膝下に痛みが生じて腫れてきます。

単純性股関節炎

関節疲労により生じる炎症です。
日中の活動量が多過ぎることで関節軟骨に負担がかかり、夜間に関節炎が生じるケースがあります。

ペルテス病

大腿骨の股関節付け根部分「大腿骨頭」が血行障害による壊死し圧壊する病気で、股関節の病気ですがお子さまは膝の痛みとして訴えることもあります。、跛行(正常に歩けないこと、引きずるように歩くこと)やレントゲンで診断できます。放置すると将来的に股関節に変形が起こるため、早期発見が重要な疾患です。

化膿性股関節炎
細菌が股関節に侵入し発症する化膿性股関節炎は腫れや熱っぽさを伴い、股関節の痛みで歩けなくなります。初期症状が成長痛と類似しているケースがあるので要注意です。

大腿骨頭すべり症

下肢蜂窩織炎

下肢軟部組織の細菌感染で、軟部組織の腫脹(腫れ)、熱感、発赤、痛みを伴います。

・アレルギー性紫斑病IgA血管炎、ヘノッホ・シェーンライン(Henoch-Schonlein)紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病)
 成長痛と同じように、膝や足の関節に痛みが生じる病気です。ほぼ半数の症例で風邪などの先行感染があり、発症までは1~2週のことが多いようです。

3~10歳に最も多く、男児がやや多い傾向があります。年間10万人あたり10~20人の発症率とされています。秋から初夏に多く、夏は少なくなります。

関節痛がおよそ2/3の患者さんに出現します。通常両側性で、足関節、手関節が中心となります。股、肩、指趾関節は通常痛みません。痛みで歩行が困難となることも少なくありません。

腹痛を伴うケースが多く、足やすねに赤い小さい点状の出血斑、むくみ(浮腫)が現れます。およそ半数に腎臓病が認められ、紫斑病性腎炎と呼ばれます。

・若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチを含む)

成長痛と同じような痛みが同じような部位で長い期間続く場合や、その痛みが夜間ではなく朝に強くなる場合には若年性特発性関節炎も考えられます。

悪性骨腫瘍

成長痛と思っていたら、重篤な病気が潜んでいる可能性もあるので注意が必要です。小児の膝周辺は、まれではありますが悪性骨腫瘍の発生しやすい部位です。

・むずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome, RLS)

文字通り脚の不快感を訴える病気ですが、子供の場合痛み、特に夜間の下肢痛として訴えることもあります。発達障害の診断が普及するにつれ、この疾患の頻度が意外に多い事が分かってきました。

 症状
 むずむず脚症候群という名称ですが、脚の不快感はムズムズするだけではなく、“誰かに触られている感じ”、“脚の上を芋虫が這っている”など、お子さまによりさまざまな言葉で表現されるため、詳しい問診聴取が必要ですが、子供では痛みとして訴えることもあり、成長痛との鑑別が必要になります。

 異常感覚を言葉で表現できない子供では、マッサージをせがんだり、寝る前に泣き続けるなど、寝ぐずりの原因として異常感覚が推測できる場合があり、またベッドの柵や布団に足をこすりつける、夜になると足をパタパタさせるなど運動症状でのみ疑われる症例もあります。脚だけに限らず、腹部、頚部、上腕などに同様の異常感覚を訴える場合もあるようです。

 以下の症状が低年齢(身長がどんどん伸びているわけでもない年齢4~6歳付近)で出現し、多動傾向がある場合に、特に疑います。

 原因
 RLSの治療としてドパミン作動薬が著効することから、病態には、ドパミン神経機能異常が示峻されています。
 また、同じドーパミン神経系の異常からか、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の方に合併が見られる事がしばしば経験されます。
 ADHDの4割にRLSが合併し、RLSの3割にADHDが合併すると言われています。

 治療 
 基本的に、規則正しい、生活リズム~睡眠の指導を行い、脚をさする程度で眠ってくれるようなら、12歳くらいまでにはほとんど自然治癒していくため、経過観察します。小学校入学前は、ADHDの有無に注意します。睡眠時脳波(PSG)を記録し、確定診断してからドパミン作動薬などを考慮します。

 RLSが疑われた場合は小児科を受診していただくことになります。

・脊髄係留症候群

 学童期から思春期にかけて好発することから,かつては身長の伸びによって脊髄が牽引されることが原因と言われていたものですが、現在では動作時の脊髄の伸展によって脊髄内の微小循環障害が生じ,虚血性の脊髄障害をきたすという説が有力なのだそうです。

 上体を急に前屈したときや腰部に衝撃を受けたときなどに症状が悪化します。
 下肢の痛みもありますが、排尿障害や下肢筋力低下もきたしますし、前屈により症状の悪化を認めます。

・小児四肢疼痛発作症

夜間に限らず、四肢の痛みを訴え、家族歴があり、加齢と共に改善するもので、遺伝性があるものとして、新しく発見されました。ムズムズ脚との鑑別疾患として、今後は考慮される必要があります。

 産経新聞の記事

いつも同じ場所が痛い、何日もずっと痛い、腫れているなど場合には、何らかの疾患が隠れているサインです。そのような場合には必ず整形外科を受診してください。

 

当院でのお子さまの診察・治療の進め方

間庭整形外科では、以下のポイントを心がけ、丁寧な診察を行っています。

・笑顔で安心してもらってから診察

お子さまに「痛くて怖いような診察はしない」と理解してもらうために笑顔でコミュニケーションをとってから診察するように心がけています。

・診察の際に、下記のことについてお伺いしますので、来院前にご家庭で確認していただけますと幸いです。

いつから痛い?何をしてから痛くなった?
今はどのような動きをすると痛い?何をしている時に痛い?
ある姿勢を取ったり、何かをすると痛みがおさまりますか?

・下肢全体を調べ、隠れた原因を探す

お子さまは本来の罹患部位とは別の部位を痛いと表現することが多いことは広く知られています。例えば股関節疾患でも膝が痛いと言うことはよくみられます。下肢の関節の柔軟性、お子様の周辺環境なども含め十分な問診・診察を行い、治療に当たっていきます。

・正確なレントゲン写真の撮影

成長中のお子さまの骨は、まだ骨に成り切っておらず成長軟骨、骨端軟骨といった軟骨成分が多く、異常所見を見つけにくいことがあります。そのため、痛くない側の下肢の正常なレントゲンと比較することにより、注意すべき疾患の見逃しを防ぐよう心掛けています。また、正しい診断には正確なレントゲン撮影が不可欠ですので、左右対称に正確に撮れているかを常に確認しています。

お子様の痛みの訴えがありご心配な時には、お子さまとご家族が安心して診察を受けられるよう心がけておりますのでお気軽にご相談ください。

 

成長痛Q&A

Q 成長痛というのはどんな痛みですか? 
A 以下のような特徴を持つ痛みです。
  •夕方から夜間に下肢(膝周囲が多い)の痛みを訴える。
  •痛みの程度は様々で泣くほど痛がることもある。
  •さすってやったり抱っこしたりしていると痛みは改善し、翌朝にはまったく痛みは訴えない。
  •痛みは不定期に繰り返しおこる。
  •3歳から小学低学年の小児によくみられる。
  •保育所や幼稚園、学校などでの生活には支障はない。   

 

Q 成長痛は病名ですか?
A 成長痛という用語は一般の生活でもよく用いられている呼称です。
画像所見で異常が見つからない典型的な幼少児の下肢痛の意味で用いるのが正しい使い方です。
骨端症(踵のシーバー病など)、オスグッド病、スポーツ障害による痛みのことを成長期にある小児の四肢の痛みという意味で、病態の異なる種々の疾患に対して「成長痛」という呼称が使われている場合も散見されますが、これは医学的には正しくはありません。

 

Q  成長痛の原因はなんでしょうか? 
A 当初はリウマチ性疾患と関連する疼痛と考えられていましたが、1930年代にリウマチ性疾患との関連は否定的とされ、以後は器質的疾患の明らかでない疼痛と考えられるようになりました。
 1950~1970年代にかけては家族背景や心因との関連を示唆する報告がなされるようになりました。
 その後様々の要因の関与が検討されてきましたが、いまだに痛みのはっきりとした原因は分かってはいません。

 

Q どの年齢や部位に多いですか? 
A 年齢は2~14歳にみられ、好発年齢は3~5歳の幼児です。疼痛部位は膝から足部に多く、疼痛発生時刻は夕方から夜半にかけて多いのが特徴です。
 また有病率は2.6%から49.4%と報告されています。最近のオーストラリアでの調査では4~6歳児の37%で認められたと報告されており、極めて頻度の高い症状といえます。

 

Q 病院ではどのように診断がなされますか? 
A 夕方から夜間に突然下肢を痛がる、といって来院した場合に本症を疑います。泣くほどの疼痛を訴える児もいますが、疼痛の強さは診断上の意義は少ないです。痛みの持続時間が問題です。数時間以内の一過性のものであることを確認することが大切です。
 また病院での診察時には、患児に疼痛の訴えがないことを確認します。来院時にも疼痛を訴える場合には、成長痛以外の原因を考えなければなりません。

 

Q 診察ではどのような異常がありますか? 
A 通常、腫脹や圧痛、関節の運動制限などの異常は認めません。
腫脹や運動制限がある場合には、外傷など他の原因を考えます

 

Q 検査は何を行いますか? 
A 単純X線検査(レントゲン撮影)は行います。両大腿正面像、両下腿正面像を撮像して下肢全体の異常を検討します。成長痛では異常な所見は見られません。
 血液検査の必要はありません。

 

Q 診断基準はありますか? 
A 一般的に用いられる診断基準はまだありません。
当院では、簡便な基準として
1.疼痛持続は8時間以内
2.来院時には無症状
3.診察上異常所見なし
4.単純X線(レントゲン)検査で異常なし
の4項目を満たす場合に成長痛と診断しています。

 

Q 治療法はありますか?
A 痛みに対する特別な治療方法はありません。 
 痛い時には、疼痛部位をさすったり、外用剤を貼付するなどの処置で様子をみてよいと思われます。消炎鎮痛剤の内服あるいは坐薬使用の必要は特にありません。
 下肢筋のストレッチ運動が疼痛の軽減に有効との報告もあり、お子さまの状況に合わせて検討してもよいと思います。

 

Q 将来何か問題が起こることはないでしょうか?
A 後遺障害についての報告はありません。小学生以降では痛みの頻度は自然に少なくなっていきます。

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