子どもの成長とO脚・X脚
歩き始めの乳幼児は10度程度のO脚
歩き始めの乳幼児は周囲から注目され、兄弟姉妹や両親と比較されます。
漠然と「歩き方がおかしいこと」を主訴として整形外科外来を受診する乳幼児がいますが、
両親からお話を伺うと主訴はO脚であることが多いです。
O脚とは、内反膝と同義で、足をそろえて膝を正面に向けて立った場合に、膝の内側に隙間ができる状態をいいます。
逆に、X脚は足をそろえようとすると膝がぶつかって足の内側に隙間ができる状態です。
骨や関節の配列のことをアライメントといいますが、下肢アライメントは大腿と下腿の関係を指します。
そもそも乳幼児の正常な下肢アライメントは、歩き始めの乳幼児(生後12か月前後)は平均10度のO脚であると報告されています。
成人は、平均5度前後のX脚であると報告されていますから、成人と比較すると乳幼児のO脚は異常に見えてしまいますね。
歩き始めの乳幼児では、15度以上のO脚を病的の目安とし、原因を精査する必要があります。
下肢アライメントは成長とともに変化する
歩き始めの乳幼児は10度程度のO脚であり、成人は5度程度のX脚であると書きましたが、その途中の変化の過程は以下の図のようになります。
幼児の下肢アライメントは徐々にO脚が改善し、2歳6ヶ月ころにほぼストレートになり、その後はX脚が強くなり、3歳6ヶ月ころに平均10度程度と人生で一番強いX脚となります。
その後はX脚が少し弱くなり、10歳までに成人と同程度の下肢アライメントに落ち着きます。
このような下肢アライメントの変化を念頭に考えると、「1歳のO脚は正常な成長過程であることが多いが、3歳のO脚は軽度であっても病気を疑う必要がある」となります。
遺伝的な要素も影響するので、ご両親の下肢アライメントも参考にさせていただく場合もあります。
O脚の原因として多い「くる病」
O脚の原因として多い疾患は、くる病(骨軟化症)であり、まれに骨系統疾患が潜んでいます。
ブラウント病(Blount病)もO脚の原因として目にしますが、原因不明の骨端線障害によるO脚ですので、単純X線で骨端線の異常がないかで判断します。
X脚は低ホスファターゼ血症や様々な骨系統疾患から起こることがあります。また、X脚を呈するくる病もあります。
骨系統疾患であれば、整形外科医として全身の骨格に何か違和感を覚えることが多いです。
くる病は小児内分泌科が中心となって治療、骨系統疾患は小児整形外科がメインに関わります。疑われた場合は専門の大学病院などへご紹介いたします。
くる病の診断
下肢アライメントに異常を感じたら、まずレントゲン(単純X線)で評価します。
もし骨端線がガタガタと階段状に変形していたり、通常の骨格と明らかに異なるものであれば、小児整形外科専門医に紹介となります。
くる病の場合は、レントゲン所見で骨端線が拡がったり、骨幹端に杯状陥凹を形成したり、骨端線周囲にけば立ちを認めたりします。
骨は、I型コラーゲンなどの有機質を成分とした骨基質と、リンやカルシウムなどの無機質を成分とした骨塩から成ります。
くる病はリンやカルシウムが骨基質に沈着せず、骨塩が不足している病気です。
原因として、リンの不足やカルシウムの不足、ビタミンDの不足があります。
ビタミンDはリンやカルシウムの吸収に関わっています。
単純X線で異常を感じたら、リン、カルシウム、ビタミンD(25(OH)ビタミンD)、アルカリホスファターゼ、PTHを含めた血液検査を行います。
リンが低値であれば、低リン血症性くる病を疑い、内分泌科への紹介となります。
ビタミンD欠乏によるくる病では、カルシウム低値、ビタミンD低値、PTH高値、アルカリホスファターゼ高値となります。
リン、カルシウム、ビタミンDが大切
「O脚だけど、大学病院に行くほどでもない」という程度のO脚も多いです。
このような場合の生活指導や簡単な装具療法をご紹介します。
食事ではリン、カルシウム、ビタミンDが大切ですが、リンはさまざまな食べ物に含まれていますので、カルシウムとビタミンDの摂取が重要です。
カルシウムは、乳製品、大豆製品、小魚、小松菜やチンゲン菜に多く含まれます。
魚や乾燥したきのこ類にはビタミンDが多く含まれ、生のきのこ類、卵、肉類にも少量含まれます。
母乳にはビタミンDがあまり含まれないことにも注意が必要です。
ビタミンDは紫外線により皮膚で生成されるので、日光浴も大切です。夏場1日30分以上、冬場1日1時間以上の日光浴が推奨されています。
重症例や低リン血症性くる病では投薬が必要ですが、軽症であれば食事や日光浴の指導で十分な場合が多いです。
装具の有効性については議論が残りますが、O脚に対する外側ウェッジのインソールがあります。
食事や日光浴の指導、インソール作製を行い、少し経過を見ると改善するケースが多いと思います。
改善しないケースでは小児整形外科専門医の受診となります。
長下肢装具の作成、それでも改善しない症例では手術が行われます。
低侵襲のプレートによる成長抑制から創外固定器による変形矯正まで、重症度に応じた術式が選択されます。